東大生チームが小惑星リュウグウから水が存在したことを明らかに

小惑星リュウグウの母天体が45億年以上前に誕生した後、10億年以上にわたり氷が存在していたという分析結果を、東京大学などの研究チームが10日付の英科学誌「ネイチャー」に発表しました。この研究は、探査機「はやぶさ2」が採取した砂の成分を調査したものです。従来の推定に比べ、母天体には2~3倍多くの水が存在していた可能性が指摘されています。地球の材料となった小天体も、同様の特徴を持つと考えられています。

飯塚毅准教授(宇宙地球化学)は、「地球形成時には、現在の海洋質量の60倍以上の水が存在していたことになります。宇宙空間にどれだけの水が失われたのか、あるいは地球内部にどのように入ったのかといった新たな謎が生まれました」と述べています。

リュウグウは、地球と火星の軌道に近い直径約900メートルの小惑星であり、母天体が他の天体と衝突して破壊された後、岩石が再結集して形成されたと考えられています。リュウグウは太陽系の形成過程に関する重要な記録を保持しているとされています。

研究チームは、リュウグウの砂に含まれる金属の比率を解析し、母天体が形成されてから10億年以上後に、一部の金属が水とともに流出したことを発見しました。

「はやぶさ2」ミッションの目的は、地球における水の起源や生命のもととなる有機物がどのように地球に持ち込まれたのか、またそれらの物質がどのように地球の岩石と相互作用し、進化してきたかを解明することです。このプロジェクトは、C型小惑星のリュウグウをターゲットとし、そこから得られるサンプルを通じて太陽系の形成過程を理解する鍵を探るものであり、特に水や有機物の存在とその進化にフォーカスしています。

リュウグウは、1999年に発見されたC型小惑星で、地球に近い軌道を持ち、比較的少ないエネルギーでアクセス可能な小惑星として注目されました。JAXAは、前作「はやぶさ」の次なるミッションとしてC型小惑星としてリュウグウを選定し、独自の資源を生かした科学的研究を行うことを決定しました。

「はやぶさ2」には、科学観測を手助けするための複数の高度な観測機器が搭載されています。光学航法カメラ(ONC)は探査機のナビゲーションと科学観測を行い、近赤外分光計(NIRS3)は水に関連する鉱物の分布を解析、表面温度の変化を記録する中間赤外カメラ(TIR)は小惑星の物理状態に光を当てます。さらに、レーザ高度計(LIDAR)は小惑星の地形や重力を調べ、サンプリング装置(SMP)は表面の物質を回収します。

ミッションは、2014年に打ち上げられ、地球スイングバイを経て2018年にリュウグウに到着。第1回タッチダウンでは、表面物質のサンプルを成功裏に回収し、続けて衝突装置を用いて人工クレーターを生成しました。このプロセスは、地下物質のサンプルを得るための重要なステップとなり、2019年7月には第2回タッチダウンを実施しました。

帰還した試料は、リュウグウの形成と進化を理解するための貴重な手掛かりを提供しました。初期分析では、リュウグウの鉱物が炭素質コンドライトに類似していることが確認され、特に多量の水分(約7%)と炭素(約5%)を含むことが明らかとなりました。また、母天体における水質変成が太陽系誕生から約500万年後に起こったことも推定されています。

さらに、リュウグウの試料には液体の水が含まれており、これはかつて存在した水の証拠とされます。この情報は、地球における水や有機物の起源を解明するための重要な手がかりとなり、太陽系の進化の歴史を理解するための新たな視点を提供しています。このプロジェクトは、地球上の物質の起源を探る科学研究において、極めて大きな意義を持つものといえるでしょう。